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ラッフルズ 1887
ボスポラス海峡にまたがる大都市イスタンブールの彼方には、見る者を魅了する内陸の世界が広がっています。目を見張る火山地帯の風景、地下に広がる洞窟都市、そしてアプリコットやピスタチオ、ブドウが実る渓谷。夜明けに気球で空へ舞い上がれば、そのすべてを一望できるのですと、トルコ専門家のジェレミー・シール氏は綴ります
無数の釣り糸が垂れる光景で有名な、金角湾を望むイスタンブールのガラタ橋を縫うように渡る私に、3人の男性が立て続けに親切(かつ緊急)な助言を投げかけてきました。最初の男性は「体重を測ってみては?」と体重計を勧め、次の人は「靴を磨いた方がいい」と提案し、最後の男性は「このレモン搾り器が今こそ必要だ!」と、朝から通行人に売り込んでいた商品を差し出してきたのです。 これがイスタンブール。文化体験に劣らず人との出会いに富んだこの街だからこそ、私は今この瞬間を不思議に感じながらも楽しんでいるのです。
いつもこうです。物売りたちの軽妙なやりとりに応じるのも、16世紀のモスクの高くそびえるドームに見とれるのも、オスマン様式のハマム (トルコ式風呂)で熱い大理石に体を横たえるのも、フェリーでアジア側へ渡るのも、グランドバザールのアーチ型の小路でお気に入りの布を探すのも、はたまたメゼのランチやバクラヴァの一皿を自分へのご褒美にするのも、イスタンブールに魅了されずにはいられないのです。
ボスポラス海峡にまたがるこの大都市はあまりにも魅力的で、訪れる人々がトルコの他の地へ足を伸ばさずとも満足してしまうのも無理はありません。しかしそれでは、トルコ中部に位置するカッパドキアを見逃してしまうことになります。イスタンブールから733km、時間に余裕がなければヘリコプターでひとっ飛びの距離です。
"ようこそ、何百万年もの歳月をかけて生まれた幻想的な地形へ。この地を象徴するのは、谷間から無数にそびえ立つ火山岩(トゥファ)の岩柱。その姿は、時にキノコのように、時にウィグワム(円錐型テント)のようにも見えます "
イスタンブールはおろか、世界中のどこを探しても、このトルコの魅惑的な内陸地ほど心を奪われる風景はない、そう言っても過言ではないでしょう。ようこそ、何百万年もの歳月をかけて生まれた幻想的な地形へ。この地を象徴するのは、谷間から無数にそびえ立つ火山岩(トゥファ)の岩柱。トルコでは「妖精の煙突」と呼ばれ、キノコに見えるもの、ウィグワム(円錐形のテント)に見えるもの、そして地元の人々が「愛の谷」と呼ぶエリアを歩けば、どんなに慎み深い人でも思わず赤面するような形のものまで。
"柔らかな火山岩はくり抜かれ、穀物庫、厩舎、ワイナリー、食堂、避難所、そして中でも特筆すべきは、ビザンティン様式の礼拝堂として利用されてきました"
外観の風化による奇観は、特に夜明けや夕暮れの淡いピンク色の光に照らされると、一層目を見張るものがありますが、それに負けず劣らず印象的なのが、人々がその内部で行ってきた営みです。柔らかな火山岩はくり抜かれ、穀物庫、馬小屋、ワイナリー、食堂、避難所、そして中でも特筆すべきは、ビザンティン様式の礼拝堂として利用されてきました。その精巧な礼拝用フレスコ画は、この地域に深く根付いたキリスト教の伝統を物語っています。
"イギリス人が長く自国の守護聖人と考えてきた聖ゲオルギウスは、実はカッパドキア出身だったのです"
これら数多くの岩を彫って造られた礼拝堂や修道院は、主に8世紀から12世紀にかけて築かれましたが、その中でも最も特筆すべき群がギョレメ野外博物館にあります。岩に彫られた柱廊や黄土色、オレンジ色、そして鮮やかな瑠璃色の色調が印象的な洞窟の内部は、じっくりと時間をかけて鑑賞すると、その素朴で心に響くイメージが次々と姿を現します。例えば、キリストの生誕シーンでは、正教会の伝統に基づく「キリストが初めて沐浴する」場面が愛らしく描かれています。また、イギリス人が長らく自国の守護聖人と考えてきた聖ゲオルギオスもここに登場しますが、実はカッパドキア出身で、そこでは龍というよりも巨大な蛇と闘う姿を見ることができます。
アプリコットやピスタチオ、そしてこの地域特有の土を感じさせる赤ワインを生み出すブドウの木々の茂る谷間を、ぜひ歩いてみてください。あるいは、夜明けとともに谷間の上に舞い上がる数百もの気球の一つに乗って、空へと飛び立つのも、カッパドキアならではの体験です。
しかし、ここはカッパドキア。地上に長く留まるのは難しいでしょう。ヨーロッパとアジアを結ぶ大陸の重要な交通路であるこの地には、洞窟に住む本能が必然的に深く根付いています。この地域全域で、いわゆる「地下都市」が発見されており、時には10階分の深さにも及ぶ広大なトンネルや部屋の迷路が広がります。ヒッタイト人、ペルシア人、ゴート族、サラセン人、モンゴル人、トルコ人などの侵略者たちが現れるたびに人々は身を隠し、安全を確保してきたのです。
これらの驚くべき避難所は、厩舎、ワイナリー、高度な換気システムを備え、明らかに長期の滞在を想定して設計されていました。特に印象的なのは防御設備で、転がして出入口を塞ぐことができる石臼の形をした扉や、扉を破ろうとする侵入者に対して内側から槍で突ける穴などが備えられており、その備えは非常に入念なものでした。こうした設備から考えるに、地下生活はそれほど悪くなかったのではないかと思われます。というのも、地上では気温が45度からマイナス25度まで厳しく変動するのに対し、地下では年間を通じて常に摂氏15度という環境が保たれていたからです。
洞窟の環境は、地中海沿岸からレモンをトラックで運び込み、カッパドキアの地下で越冬させるトルコの柑橘類生産者にも好都合でした。その結果、その柔らかな皮と繊細な香りで非常に人気のある「ヤタク」または「ベッドレモン」と呼ばれるレモンが生まれました。
次にガラタ橋を渡るときには、あのレモン絞り器を売っていた商人にぜひ教えてあげようと、私はふと思い出します。
ジェレミー・シール氏は、英国人旅行作家、著者、教師、放送作家であり、長年にわたりトルコに魅了されてきた人物です。彼の処女作『A Fez of the Heart』は、トーマス クック トラベル ブック アワードの最終候補作に選出されました。トルコの専門家であり、考古学者、講師、ガイドでもある、ユヌス・オズデミル氏とともに、この10年間、小規模グループ向けの文化ツアーを企画・主催しています。